灰色がかった空。
晴れでもなく雨降りでもない中途半端な空は私の心を空虚にさせた。
不安はない。
与えられた任務をこなすだけだ。
しかし。
何とも言えぬ引っ掛かりがある。
私は再びざらついた口の中を舌でなぞった。
砂。
酷くこの土地は乾いている。
水分がない。
獣はおろか植物さえ存在せず枯れ果てている。
生命を感じさせるものは何もない。
こんな荒れ果てた土地にやってきたのも、ボスの───ネオン嬢の───コレクションのためだ。
そのためにはるばる遠くから私は足を運んだ。
廃れた土地に人の出入りはないらしい。
ここに埋まっているといわれる、所謂“宝”を探さねばならない。
だが。
あの組に雇われている限りはこんな蒐集がずっと続くのだろう。
何を今更と一人ごちる。
このような仕事を何ヵ月も続けてきているというのに。
私は溜め息をつく。
そろそろ潮時かもしれない。
同胞の緋の目を探しだして元の場所へ還すのが目的だった。
しかし組は現在力を失いつつある。
頼みの占い師は消滅したも同然だ。
周囲から完全に信用がなくなる前にノストラードから早く離脱するべきか。
新たな雇用主を見つけた方が得策かもしれない。
いや、将来の話より今は任務を遂行せねば。
時々将来を案じて幾度も今の在り方に疑問を持ってしまうのは私の悪い癖だ。
私は土地を見渡しダウジングを開始した。
おおよその場所に目星をつけ、シャベルで土を掘り返した。
ざくり。ざくり。
いくら荒れ果てた土地といえど敷地の所有者もいそうなものだ。
後から咎められたりしては困る。
そこで私は予め出発前に調べておいたのだが、誰もこの土地は所有していないようだった。
しかし。
持ち主がいないといえど、私のような部外者が勝手に掘り返してよいものか疑問である。
埋められた───否、埋まってしまった骨だ。
人の。
首を横に振った。
考えるな。
私は手段など選ばない。
望むままに要求されたものを届けるだけだ。
掘り返し終えて暫し私は沈黙の祈りを捧げた。
私はろくな死に方をしないだろう。
この罰当たり───
なかでも希少価値の高いと云われる指の骨を回収した。
というより、散乱していたせいで拾える遺骨はこれだけだった。
空振りというわけではない。
持ち帰れるものがあっただけましだろう。
後は土を元に戻して任務は終了だ。
いつまでこうして雇われの身でいるのだろう。
ゴンやキルアは元気にしているだろうか。
レオリオは勉強がはかどっているのだろうか。
空を仰ぎいつの日か一緒に旅をしていた頃を思い出す。
会いたい───
心がそわそわしてならない。
駄目だ。
邪心は集中力を打ち消す。
今は任務中だ。
早く今回の品をボスに届けなくてはならない。
到着してまだ30分程度しか経っていないが目的を成し遂げたらもう用済みだ。
踵を返そうとしたそのとき。
ふと声を掛けられた。
母のような、優しい声が私を誘う。
ちょうど疲れていた。
一休みさせてもらえるらしい。
ならばありがたく使わせていただこう。