「久しぶりだね!レオリオ!」
「よぅ、ゴン!元気にしてたか?声を聞くのは何ヶ月ぶりだろうな」

携帯電話を通じて聞こえる仲間の声。
懐かしさに自然と口元が緩んだ。
しかし突然電話をしてくるというのもおそらく何か理由があるはずだ。
それがなんとなく嬉しい知らせではないような気がして、話の先をあまり聞きたがっていない自分がいることにレオリオは気付いた。

「あのね、実はレオリオに確認したいことがあってさ」
「なんだぁ?改まって」
「うん…」
「もったいぶらないで早く言えって。気になるじゃねえか」
「そうだね。あのさ…レオリオって最近クラピカと連絡取ってるかなぁと思って」

来た。
やはりその話題だったか。
実は唯一、メールでも連絡が取れないもしくは取りにくい相手がクラピカだった。
クラピカは元々あまり自分から連絡をしてくるタイプではない。
だから返事を催促しても無意味に終わっていた。

「あいつはメールも止めたままにしやがるし俺の方には連絡してきてないぜ。ゴンも連絡取れてなかったのか」
「うん…仕事が忙しいって聞いてたしあんまりしつこく連絡するのも悪いかなって思ってさ」
「同じことを俺も考えてたぜ。全く…あいつはどうしてこう殻に籠るんだろうな?そのせいで逆に心配かけてるってことをわかってねぇ」


レオリオは溜息をつく。
本当ならば直接会いに行きたいくらいだ。
連絡すら寄越さないのでは生きてるかどうかさえもわからないのだ。
あいつに限ってそんなことは…と信じてはいるものの、ハンターという職業上命の危険は常に付き纏うだろう。
そして普段は冷静なくせに場合によっては無鉄砲に動く。
心配しだしたらキリがない。
こんな心配ばかりしていても実際に会えばあいつは可愛くないことばかり言うんだからかえって心配することが損な気分にもさせられる。

「ったく…保護者じゃねーってのにな」
「え?何?レオリオ」
「んやーこっちの話よ。それよりゴン、お前ら今何してるんだ?」

最近の近況やら、修行の話、旅の話などに花を咲かせているとゴンの横からやや怒りっぽい口調で割り込んで来る声が聞こえる。
考えるまでもなくその声はキルアだった。

「あのなーゴン!俺達そんな話をするためにリオレオに電話したんじゃねーだろ」
「そうだけどさぁ…せっかく久々に電話したんだし、このくらいいいじゃない」
「そうやってっからいつまでも話が進まねぇんだろ!ったく…おい!オッサン!話があるんだ。俺達今さ…噂の屋敷について調べてる最中でさ」

未だ名前を正しく呼ばないことにお約束のツッコミを入れたかったが、屋敷という言葉を聞いてうろたえた。
キルア達が何をしようとしているのかなんとなく推測できる。

「おい、まさか」
「そう、そのまさかさ。こっちも一段落落ち着いたってことでちょっと寄り道してたんだよ。そしたらこの噂が耳に入ったってわけ。でもオッサンが知ってるなら話は早いや。また協力してくれる?」
「おいおいちょっと待て。そう簡単に屋敷が見つかるわけないだろう?なんたってその屋敷は見える者にしか見えないって話じゃねぇか。俺達が見つけられるのか?それに向かったハンターは皆行方不明になってるんだぞ。それと俺は相変わらず…」
「念の修行はしてない、だろ?そんなことこっちだってわかってるっつーの。俺達はオッサンに念なんか期待してないから安心しなよ」

酷い。
確かに修行をしていないことは認めるが、だからといって素人というわけでもないのに酷い言われようである。
レオリオはぐうの音も出ない。
黙ったままでいるとキルアが話を続ける。

「医者にはなってないにしてもさ、ハンター試験のときみたいに治療道具一式くらいは持って来れるんだろ?しかも今のオッサンならあのときより知識もあるんじゃねーかと思って電話したんだけど。それともこんな電話されるの迷惑だった?」

レオリオは一瞬だけムッとしたが、すぐにそれはキルアが裏返しの意味で言っていることは理解できた。
ただの治療役目的でメンバーを揃えるというのならレオリオ以外にもいるだろう。
もっとも念使いのハンターと行動した方がいいに決まっている。
それでもわざわざレオリオに電話をしたのは。

「迷惑なんて誰も言ってねぇだろ?任せとけ、ちょうど体も鈍ってたしな」
「オッケー。じゃあさ、待ち合わせしようぜ。ちなみに俺達はもうその噂の屋敷があるって言われている町まで来てるんだけど」
「本当か?!俺も実はな───」

友人と旅行に来ていたところだと答えれば、なんとキルア達はすぐ近くのホテルに宿泊しているという。
こんな偶然もあるものだろうかと驚きを隠せない。
向こうもまさか旅行でたまたま居合わせていたなんて気持ちが悪いと言ってきたのでこんな偶然もあるもんだ、縁が続くってのはいいもんだと言えばジジくさいと罵詈雑言を浴びせる。
相変わらず可愛くないガキだと言い返してみるがそこはスルーされてすぐにホテルまで来てくれとのこと。
全く…しかしどうしたものか。
つい話が弾んでノリに任せてしまったが…いや、旅行なんてのはいつだってできる。
それよりも今は仲間達に会いたくて地に足がつかない気分だ。
ホテルの場所だけ聞いて電話を切ると、レオリオは友人らに急用ができたから帰ると言い残し、この場を立ち去った。

友人らの呆れ顔を見るのは今回が初めてではない。