年齢に見合わない高級なホテルにレオリオを待っていたのは絶世の美女…ではなく、先ほど電話をしたゴンとキルアだった。
ワインでも嗜んで夜を過ごすには絶好の部屋なのに、見れば至るところに菓子やスナックのゴミが散らかっている。
雰囲気などぶち壊しもいいところである。
相変わらずお前らは、と言う前に明るく挨拶をしたのはゴンだった。
そうだ、まずは久々に会ったのだから本来はそこから始めるべきだろう。
しかしもう一人の少年はアイスクリームを食べながら雑誌をレオリオに見せるように広げて投げつけた。

「おい!行儀悪いぞキルア!」
「オッサンはそういうところ説教くさいから嫌なんだよなぁ…」
「ったくこんな高そうなホテルに泊まっておきながらアイス食ってんじゃねぇよ」
「アイスは関係ないだろー」
「あー!もう二人ともわかったから早く本題に入ろうよー!」

痺れを切らしたゴンが仲裁に入り、やっと話の本題に入る。
確かに誰も止めずにいたらこのままだらだらと話し込むだろう。
焦る必要はなくとも貴重な時間を無駄にはできない。
三人は広げられた雑誌に首を突っ込むように見入った。
広げられたページは説明するまでもなく、今回の目的である例の屋敷について書かれた記事なのだが。
素人が書いたものなのか、超能力者にしか見えない屋敷と称されている。
大体この手のものは当てにならない類いなのだが、よく考えればその超能力とやらが何を意味しているかは想像できる。

「こりゃあもしかしなくとも…念の使い手なら見えるって言いたいのか?」
「たぶんね。でもさ、俺思ったんだ。だったら今回の件、オッサンは用無しだなって」
「な!お前失礼なこと言うなよ!お前らが電話したからせっかく来てやったってのに」
「でもレオリオ…念まだ使えないんだよね」

三人して溜め息をついた。
未だレオリオは念能力は取得できていない。
これは紛れもない事実である。
レオリオとしてはあまり突いてほしくないところではあったが…いや、でも待って、とゴンは制した。

「要は屋敷の場所ってのを念で見つければいい話でしょ?レオリオに見つけるのは無理でも俺達にならできる。それならレオリオも入れるんじゃない?」
「なるほどな!ゴン、やっぱりお前冴えてるな」
「でもよ、中に入れるかどうかなんてまだわからないんだぜ?ホントに俺が行けるかどうかなんて──」

だったらついてこなきゃいいだろ、と投げやりにキルアは言った。
こんな子供に除け者のように言われる筋合いはねぇ、と言い返したかったが実力もないのに口先だけで言っても説得力がないのは自分でもわかっていた。
早く念を覚えようと心に固くレオリオは誓った。
雑誌でおおよその場所も把握し、どのように屋敷を見つけるか方法もわかった。
しかしこれだけの情報では嘘か真実かわからない。
そこで電脳ページも頼りながら情報を探した。
意外にも時間はそうかからずに情報を掴むことができた。
有名になっていたせいもあるのだろう。
いずれもデマではない真実のようだが、新たにわかった情報もある。
それは見つけられる時間帯は制限されているとのことだった。
夜更けから夜明けの夜の時間帯だけなのだという。
ならば今は夕方、もう少し経てばちょうどいい時間になるはずだ。
行くには今が一番いい時間帯だということで三人はホテルを後にした。
レオリオはまだ着いたばかりだったのでもう少しこのホテルで時間を潰したかったらしいが、時間が制限されている以上諦めるしかない。
後ろ髪を引かれる思いで外へ出たレオリオを含む三人は目的地まで足を運んだ。
その頃には日も沈み、夜を迎えようとしている。

「で、この辺りが怪しいんじゃねぇかって言ってたな」
「人がたくさんいる…みんな気になるんだね」
「ただの好奇心ってわけじゃないみたいだぜ。さっき調べててわかったんだけど、どうもこの屋敷に鬼がいるんだと。ハンターばかり集まってるのはその鬼に掛けられた賞金目当てってのが本当の理由なんだと思う」
「いわゆる人殺しってやつか」
「たぶんね。まぁ現実的に考えて屋敷に入った奴が帰ってこないって言うんだから死んでるんだろうけど」

物騒なこと簡単に口に出すんじゃねぇよ、とレオリオはキルアに言った。
確かに人が帰ってこないとするならばあながちそう考えるのが自然なんだと思う。
わかってはいたが自分が首を突っ込もうとしていることは思った以上に危険なのではないか、とレオリオは思った。
若干手が震えているのが何よりの証拠である。
だからといって引き返すわけにもいかない。
乗りかかった船ならば最後まで行くしかない。

数分が経つと周囲にいたハンター達が突如減ったように思う。
気のせいだろうか。
否、確実に減っていた。
どうやら彼らは場所を見つけて中へと侵入したようだった。
一方ゴンとキルアも屋敷を特定できたようだ。
ここには荒れ果てて乾いた土地しかないのに。

「見つけた。意外にあっさりだな」
「だね…ねぇ、キルア。もうちょっと様子見ない?」
「なんだよゴン。まさかビビってんじゃねぇよな」
「そうじゃなくてさ…なんか変じゃない?いくら有名になってるからってこんな簡単に建物が見つかるかなぁって」
「おい、ゴン。お前は何が言いてぇんだ?」
「うん…屋敷が俺達を…招いているみたいに思うんだ」